「EU CRAって何ですか?うちの製品、輸出できなくなるんですか?」——専門家に聞いてみた
登場人物
🏭 田中さん(製品開発部長・50代)——自社製品の一部を欧州の代理店経由で販売している。最近「EU CRA」という言葉を耳にして不安になっている。
🔒 佐藤さん(セキュリティコンサルタント)——大手コンサル出身の製品セキュリティ専門家。EU CRAの動向もフォローしている。
第1章:EU CRAって何ですか?
🏭 田中: 取引先の欧州代理店から「CRAへの対応はどうなっていますか」って聞かれたんですが、正直よく分からなくて。
🔒 佐藤: EU CRAは「Cyber Resilience Act」の略で、サイバーレジリエンス法と呼ばれています。EU市場で販売するすべてのデジタル製品が対象で、2024年に法律として成立して、2027年12月に完全適用されます。
🏭 田中: あと1年半くらいですか。
🔒 佐藤: 製品の設計変更やプロセス整備を考えると、そんなに余裕はありません。
第2章:何が求められるのか
🔒 佐藤: 大きく分けて4つの柱があります。
1つ目:セキュリティ・バイ・デザイン。製品の設計段階からセキュリティを組み込むこと。リスクアセスメントを行って、その結果を設計に反映するプロセスが必要になります。
2つ目:脆弱性管理の義務化。最低5年間、脆弱性を把握し修正パッチを提供する義務があります。脆弱性が見つかったら24時間以内にENISAに報告する義務もあります。
3つ目:技術文書の整備。リスクアセスメントの結果、採用したセキュリティ対策、テスト結果などを文書化する必要があります。
4つ目:CEマーキングとの統合。CRAに適合した製品はCEマーキングの対象になります。
第3章:うちの製品は対象になるのか
🔒 佐藤: ネットワークに接続するデジタル製品はほぼすべて対象です。ただし製品によってリスクのカテゴリ分けがあります。
| カテゴリ | 対象例 | 適合性評価 |
|---|---|---|
| デフォルト | 一般的なIoT機器、スマート家電 | 自己適合宣言が可能 |
| 重要(クラスI) | ルーター、ファイアウォール、産業用IoT | 整合規格に基づく自己評価 or 第三者評価 |
| 重要(クラスII) | OS、産業用制御システム、スマートメーター | 第三者評価が必要 |
| 極めて重要 | スマートカード、HSM、セキュアエレメント | 欧州サイバーセキュリティ認証が必要 |
だからこそ、規格の完成を待たずに今できることから始めるのが正解なんです。
第4章:JC-STARとの関係
🔒 佐藤: 直接の互換性はありませんが、求めている内容にかなり共通点があるんです。
- デフォルトパスワードの排除 → JC-STARでもCRAでも要求
- セキュリティアップデートの提供 → 両方とも必須
- 脆弱性の受付体制 → 両方とも求められる
- データの暗号化 → 両方ともカバー
JC-STARの★1取得をフェーズ1のゴールに設定するのが賢いやり方です。JC-STARの準備がそのままCRA対応の第一歩になります。
第5章:今から何を準備すべきか
🔒 佐藤: 現実的なステップはこうです。
フェーズ1(今すぐ〜3か月):現状把握
- 対象製品の洗い出し(EU向けに販売しているもの)
- JC-STARのチェックリストで自社製品のギャップ分析
- 脆弱性受付窓口の設置
- アップデート提供方針の文書化
フェーズ2(3〜6か月):体制構築
- 脆弱性対応プロセス(PSIRT機能)の整備
- セキュリティ開発プロセスの見直し
- 技術文書のひな形作成
フェーズ3(6〜12か月):適合準備
- リスクアセスメントの実施
- 技術文書の完成
- 適合性評価の方法の決定
- 必要に応じて製品の設計変更
第6章:違反したらどうなるのか
🔒 佐藤: 罰則はかなり厳しいです。
- CRAの基本要件に違反した場合:最大1,500万ユーロまたは全世界売上高の2.5%
- 報告義務違反:最大500万ユーロまたは売上高の1%
CRAに適合しない製品はCEマーキングを貼れないので、EU市場で販売できなくなるんです。だから「対応しなくてもいいか」ではなく、「いつから対応を始めるか」だけが問題なんです。
まとめ:EU CRA対応の3つの出発点
| # | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | EU向け製品のリスト化 | 対象範囲の把握 |
| 2 | JC-STARチェックリストでギャップ分析 | CRAとの共通要件を先に潰す |
| 3 | 脆弱性受付窓口とアップデート方針の整備 | 最も基本的な要件への対応 |
🏭 田中: JC-STARから始めて、CRAに広げていく。この順番なら現実的にやれそうです。
🔒 佐藤: 今日やったことが1年後に効いてきます。
自社だけで進めるのが難しいと感じたら
「CRAの要件が自社製品にどう当てはまるか分からない」「JC-STARとCRAのどちらから手をつけるべきか判断できない」——そんな場合は、外部の専門家と一緒に整理するのも現実的な選択肢です。
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